濱田庄司「棟方に学ぶ」より
棟方が箱書きをしてゐるのを見てゐたら、鵜といふ字はどう書くのかといふ。
弟偏に鳥だといふと、直ぐ箱へぶつつけに弟とだけ書いて、旁りは鳥か隹かと聞く。
もう箱の上には今始めて組み合されたばかりの鵜の字が、習つた字にはない立派さで
書き上げられてゐる。
文字を書くという作業に「慣れ」が必要なのか、無駄なのか考えています。
一見、手馴れたバランスの良い上手な文字が何も伝えなくて
純真無垢な子供のような文字が強く心に残ります。
天才の形だけを真似てもしょうがないですが
その清らかな心を伝えなければと思う日々です。
分かりやすく言うと・・
「鵜」という文字を書く事に慣れるより
常に筆を持って書く事に親しんでおれば
初めての「鵜」を書く時にもすんなりと
立派な文字になるのです。
そうやって書く文字は常に新鮮な気持ちだから
初めての文字であろうが自分の名前であろうが
同じ事なのです。