人気ブログランキング | 話題のタグを見る

老舗

老舗_d0006260_12331747.jpg

今は一人で細々とやっていますが、我が家は木彫を生業としてから三代目で
およそ90年ほどが経過しています。

日本には老舗と言われる創業100年以上の企業が10万、200年以上でも3000社以上あるそうです。
最も古いのは大阪・天王寺にある寺社建築の金剛組は創業が西暦578年で世界で最も古い企業です。
一度始めた事をしぶとく続けるのは日本人の大きな特性のようです。
世界一長く続いている天皇家などまさにその象徴です。
商売や代々続いた家柄でなくても田舎に行けばどこにでもある稲作の田んぼの
多くは千年以上の歴史を持つものです。
場所によっては二千年をはるかに超えて稲作を続けてきた田んぼが珍しくないのです。
日本人の大部分は百姓の末裔ですから、ひょっとしたら貴方の家の農業は
創業三千年の老舗なのかもしれないのです。
そういう伝統を守る姿を美しいと思う心や、仕事に対するひたむきな姿勢の
職人気質を尊ぶのが我々が先祖から受け継いできた伝統そのものです。

欧州には日本ほどではないですがそういう老舗も存在するようですが、
アジアの周辺の国々では生業を伝統として受け継ぐ文化がほとんどないようです。
隣国でも小規模な家業を子孫に継がせるより今の代で稼げるだけ稼いで、
子どもは大手企業など安定した職に就かせるのが良いとされています。
老舗という概念を尊ぶことがないのです。

外国籍の友人が何人かいますが、彼らは転職が上手いと思います。
見切りをつけるタイミングもありますが必ず儲かる自分に合った次の仕事を
探す努力をしています。
優秀な彼らは自分を隠さずに語り、はやく友人を作ります。
美術系や職人の仕事は儲からない時が続く事があるので、
苦しい時間を長く持つ場合があります。
そういう時に、思いきって他の世界に飛び込むか、
それとももう少しじっと辛抱してみるかたいへん悩む問題です。
グズグズと三代も続けてきたとも言えるし、
大きな伝統を作るためにひたむきな努力を続けているとも言えるのが
今の私ですが、後継者については全く考えていないのも現状です。
先の事を考えるより、今の仕事を最高のものに仕上げようと
努力するのも日本人の特性だろうと思います。
その中から幸いにも続いてきたのが老舗ですから、
その影にある見えない努力の積み重ねは想像もできない
大きなものなのでしょう。
by tatakibori | 2012-08-29 13:20 | その他
<< 水は低い方へ流れる 隈取絵師 >>