普請に似た言葉に「勧進」というのがあります。
昔の人は歌舞伎の「勧進帳」でその意味を知っていました。
武蔵坊弁慶が焼失した東大寺の再建のために勧進の旅をしていると言い、
白紙の巻物を勧進帳として読み上げるのが見せ場です。
東大寺というと権力の象徴のように思われがちですが、
当時でも民間から浄財を募って再建されたのです。
伊勢神宮も戦国の頃に御遷宮が途絶えてしまい
尼僧が全国を行脚して浄財を集め先ず宇治橋を架け替えた
という史実があります。
(私はその姿を「遷宮上人」と題して木彫りにした事があります。)
今も全国の社寺で似たような勧進が行われています。
最近は信仰心の無い人が増えたり、土着の人が減少したり
どこでも浄財を集めるのに苦労が多いと聞きます。
戦後生まれが主流になった今は団塊以下の世代において
信仰心の無い人が多いようです。
特に教育の荒廃した70年代の日教組の教えを受けた
50代後半世代が難しいようです。
40代以下の若い世代の方がまだ理解が得られやすいのです。
伊勢神宮を除くと、近年で最も話題になった普請は昭和の
東大寺の改修工事です。
清水公照という有名なお坊さんが面白いアイデアと
自身の手になる優れた絵や書、陶芸や塑像の仏さまなど
多くを製作してそれを役立てたのも新しいこころみだったようです。
それに便乗した美術業界の大騒ぎの方が印象が強くて
本質を見失いがちでしたが、すばらしい作品も多く驚くほどです。
じつは伊勢神宮の式年遷宮はあの時の東大寺に比べると桁違いに
大きなお金を集めます。20年に一度ですから大きな勧進が
ひそかに継続して行われているのです。
それは木材のリサイクルが効率的に行われるなど文化の
継承としての意義も大きなものです。
もちろん経済効果も一桁以上違います。
今さらですが、式年遷宮には経済の再生のヒントが多いのです。
一番たいせつなのは神さまのお祭りとして多くの人が
こころを寄せてひとつになるという事ではないかと思っています。