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玄翁と多島美

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新聞記者の取材を受ける事が時々あります。
新聞では言葉の遣い方にルールがあります。
専門用語はできるだけ避けて一般的な表現で
より多くの人が理解し易いように書く事です。
例えば鑿(ノミ)と玄翁(ゲンノウ・金槌のこと)は理解し難いので
ノミとカナヅチと平易な表現に置き換えるようになります。
でも、鑿も玄翁も広辞苑に記載されています。

先日、新聞で「多島美」という言葉を見ました。
検索をかけると玄翁よりはるかに多くヒットしますが、
広辞苑には記載されていません。
新聞の一面トップにつかうには無理があるように思えました。
「多島海」という言葉はあります。「瀬戸内海」の事です。

広辞苑では同じですが、「瀬戸内」と「瀬戸内海」は
その地域に住む人にとっては違うようです。
厳密には因島から江田島あたりの広島県の海が瀬戸内というそうです。
瀬戸内海となると広い範囲を示すようです。
ところが豊後水道や紀伊水道は現地の人にとっては瀬戸内海とは
ぜんぜん違う場所という感覚のようです。

瀬戸内国際芸術祭は備讃瀬戸と呼ばれる地域ですから
瀬戸内とはまったく違う場所だとも言えます。
ほんとうの瀬戸内の多島美に沈む現実を忘れさせる美しい夕陽を
広島で見た事があります。
「あそこは瀬戸内じゃありゃあせんがな」と声が聞こえてきそうです。

新聞やテレビに向く一般的な表現というのは難しそうです。
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by tatakibori | 2013-10-07 18:25 | 日々の生活 | Comments(9)

失われていくもの

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便利になれば必ず失われていくものがあります。
かつて、テレビによって情報の即時性と共有化が進み人間は賢くなったように思えますが、
その反面テレビばかり見ていると人間の想像力や思考力を低下させてしまうと言われました。
所謂、一億総白痴化です。
ゲームばかりしていると脳に悪影響があると言われましたが、
現状では溢れるネット上の表層だけを伝える無責任なニュースに踊らされる事のほうが
大きな問題のように思えます。
農薬、化学肥料、食品添加物、遺伝子組み換え食品など人々の不安を煽る話題には事欠きません。
若い頃に年配の職人さんから聞いた話ですが、その方の親方は「職人が自動車を
乗り回すようになったらおしまいだ」と嘆いていたそうです。
電動工具にさえ否定的だったのは言うまでもありません。
職人の技術は新しくて便利な道具と引き換えにどんどん低下していったのです。
昭和40年頃に河川改修という名の大きな環境破壊が進み、天然の美味しいウナギは
絶滅してしまいました。
中国製の安価な衣料品や家電製品の普及もファッションやオーディオなど
多くの文化を滅ぼしたとも言えます。
一部の裕福な人々の為の贅沢だったものが失われて、豊かさの民主化のような
革命であればそれは「善」と言えるのではないでしょうか。
今から20年以上前に元気の良いオヤジ達はこんな事を言ってました。
「近頃は女でも良いクルマにのっている。」
若い人にはピンとこない話だと思います。
自動車は贅沢なもので稼ぎの良い男である証だったからです。

飢えから解放された人間は肥満になります。
今度は安価に供給される食品が「悪」となってきます。
豊かさとの引き換えに安全と健康が失われていったのでしょうか。
それでも伸び続ける人間の寿命ですから、
病んだ心と身体で長い老いた時間を過ごしているのでしょうか。

「一日に玄米四合と少しの野菜と味噌を食べ・・・」は宮沢賢治の理想ですが、
私の周りの老人達はそれに近い質素で健康的な生活を実践している人がほとんどです。
芸術を楽しみ、山を散策し、野菜を作るという心豊かな生活を手に入れた老人は
どんどん増えているように思えます。
失われたものの代わりに得た幸福も必ずあるはずです。
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by tatakibori | 2013-10-01 20:24 | 日々の生活 | Comments(0)