比較される方が何処かにあれば私の個性もより理解しやすいし、 木彫と言うジャンルへの理解も深まるはずなので、 木彫作家が増える事を願っていたのです。 近年になって木彫作家が増えているようです。 今まで脚光を浴びなかった人達が注目されて、この分野の情報も 増えてきているのを実感します。 色々な表現の人がいるのですごく違和感を感じるものも ありますが、バリエーションが増えるのはとても良い事です。 若い木彫作家達が何故に素材に木を選んだのか知りたいと思う事があります。 私(我が家)の場合は先祖から木にかかわる仕事をしてきた環境が一番の理由です。 それは先祖が暮らしていた地域の風土がそうだったのです。 すぐ近くに農林学校(旧制)、製材所、林業試験場がありました。 建築関係やデザイナーへ進む人も多かったようです。 最近は美術大学に進んでから素材に木を選ぶ人が多いので、 木や道具に対する思いが少し変わってきたように見える場合もあります。 他の人達の作品を見る事によって自分のやりたい表現や出来る事が 見えてくるように思えます。 良い時代になったと、しみじみ思うのです。 #
by tatakibori
| 2017-08-28 17:18
| 仕事
真夏以外は汗が出ないので水分補給の習慣がないのも良くないです。 飲み物はよくとるのですが、コーヒーと緑茶が多いので水分補給にならないそうです。 カフェインの含まれる飲料やアルコールの含まれるビールなどは 利尿作用も強いので、水分補給にはカウントしないのです。 カフェインは日常的に摂取するものですが、興奮作用をもつ精神刺激薬のひとつでもあります。 最初に緑茶を飲んだ日本人はその刺激に驚いただろうと言う話をテレビで見た事があります。 茶道はそもそもカフェインの作用を最大限に楽しむために考案されたという見方があります。 開高健だったか、本来は作用の弱い阿片を楽しむには厳重な作法が必要であると書いています。 一滴のアルコール、カフェインや満腹も阿片を台無しにしてしまうのです。 大麻の作用も個人差が大きく、何も感じない人がいると聞いた事があります。 そのようなものと比較しなくてもコーヒーには強い習慣性があり、中毒をおこします。 コーヒーを断つと2日目くらいには強い離脱症状が現れます。 それを我慢してしばらくカフェイン断ちをすれば、最初に飲むコーヒーは 素晴らしい精神への刺激を与えてくれるかもしれません。 依存症には薬物でなくても、脳内にアドレナリンやドーパミンを発生させる 刺激的な行動でも起こるそうです。 スポーツでも音楽、ゲーム、スマホ・・・何でも依存症になれます。 美術、特に木彫刻の依存症というのがあるのかどうか調べてみました。 これは鑑賞ではそれほどの快感が得られなくて、創作に参加する事によって 依存症が起こる可能性があるようです。 木版画教室が好評であるのはそれなりの理由があるようです。 木彫刻が作者の快感にとどまるだけでは生業としては不完全です。 より楽しめる木彫刻についてはまだまだ研究の余地があります。 #
by tatakibori
| 2017-08-15 19:40
| 日々の生活
禊(みそぎ)払われた時に生まれた神さまです。 禍(まが、凶事・罪悪・災害など)を直す神さまです。 本居宣長の古事記伝にある「直毘霊(なおびみたま)」は簡単に言えば、 漢意(からごころ)を排し「かんながら」に帰るという事です。 漢意とは言挙げて対立するような外来の世俗の文化とも言えます。 「かんながら」とは随神、惟神、自然などの文字が当てられ、 人が神代から生まれながらに持つ素直な心というような意味です。 新しい外来文化と日本古来の文化の対比とも言えます。 一例を挙げれば、「袖振れ合うも多生の縁」と言いますが、 偶然による一期一会を大事にすると読むか、 偶然による出会いも前世からの深い因縁による必然の ものと考えるかの違いのようなものもあります。 映画の「ふうてんの寅さん」は前者の意味のように使っています。 それが日本の古来からの考えであったからです。 昔の戦(いくさ)では勝者が、敵は立派で強かったと讃えたそうです。 ひいてはそれが戦いの正当性や強さのアピールにもつながります。 戦争においても「袖の振れ合い」があり、 「やあやあ我こそは」と名乗る仁義があったのです。 現代のネットやテレビのニュースでは 世界は醜い憎しみや争いに満ちているようです。 しかしひとたび、神仏に向かって手を合わせ、それと心を一つにすれば、 私達の日常はまことに穏やかであると気づきます。 そういうのが直毘神の本質だと思い、今年の伊勢神宮参拝のために この版画を制作しました。 #
by tatakibori
| 2017-06-04 20:55
| 仕事
芸術に夢があって、何かを表現するために始めたのではないからです。 祖父の木彫には芸術表現に託す思いがあったのは確かです。 素材が木であったのは生まれた環境によるものでした。 それに大正から昭和の初めにかけて木彫のブームがあったようです。 有名な葛飾柴又の帝釈天の木彫はその頃に制作されたものです。 子供の頃に祖父の彫刻を見て、私は木を刻んだノミ跡の美しさを知りました。 私の木彫は木に刃物を当てた跡を作るのです。 もっと極端に言うなら、彫りクズを作る事なのかもしれません。 コンコンと音をさせて、たくさんの彫りクズを作れば、 何かたいへんな努力を積み重ねているような自己満足もあります。 写真の作品のように荒くて未完成ながら彫り跡に道具の力が残れば それで良いのだと思います。 よく切れる道具で刻まれた木に残る力強いノミ跡でしか 表現できない優しさがあります。 手数の少なさは穢れの少なさにも通じます。 純粋で無垢というのが私の目指す表現なのです。 それは私の内にある考えではなく、木が持つものであり 神の創造したものから本質を引き出す作業です。 素材に木を選んだのではなくて、ある意味の運命にも引かれて 木に関わってきたのだと思います。 つづく #
by tatakibori
| 2017-04-25 15:26
| 仕事
自分を表現するために始めた事でもないし、欲のない仕事として続けてきただけのものです。 私のものごころついた最初の記憶の中に、祖父が彫る姿があります。 いつも面白い話をして笑っている祖父が苦しそうな顔で 仏像や般若面を彫っていました。 もう少し大きくなるまで、それが木彫だと思っていました。 祖父は40歳前に脳内出血で倒れて生死をさまよった事があります。 これをきっかけにやや前衛的な木彫をするようになりました。 戦中戦後は彫っても売れないので、自分の世界に入り込んで 大胆な表現を試みていました。 その時代に棟方志功に出会って、それを励まされたのでますますその方向へ進みます。 私は日頃、現代アートは敵のように言ってますが、昭雲叩き彫の完成はむしろ前衛的な 表現にあったのです。 さらに、棟方を通じて柳宗悦の民芸運動に触れた祖父はそれに大きく惹かれていきます。 祖父は民芸を通じて円空や木喰を知りました。それまでの大胆な円空にも通じる作風は じつは独自の手法によるものだったのです。 山田家の先祖は大工職人でした。祖父が木彫を始めたのは家にそこそこの道具が揃っていたからです。 大工はノミをゲンノウで叩いてホゾ穴などを彫ります。 木彫職人の修業をしていない祖父はノミをゲンノウで叩いて彫ります。 やがて限界を感じて大阪の学校へ勉強に行くのですが、 最初に身についた手法は後々まで残ったのです。 情報のない時代にたいへんな苦労をして独自のスタイルを作ったものですから 祖父の仕事にはたいへんな力があります。 それが刷り込みになって私の木彫への意識は作られています。 祖父が私の作品を見たら許してくれるだろうか、という思いはいつもあります。 つづく #
by tatakibori
| 2017-04-07 21:36
| 仕事
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