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人間の運命

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五木寛之の新刊です。
いつもながらですが、彼の本には最初に一発のパンチがあります。
戦争が終わって朝鮮から引き上げてきた時の悲しい話です。
読者との間にまず隔たりを作ってみせるのでしょう。
昭和7年生まれですから今年77歳という年齢を微塵も感じさせぬ
時代を見据えたフレッシュな感性にも驚きます。
「運命」とは何か、「運」とはどう違うのか・・・
それらを受けとめ強く生きていくには・・・
親鸞など仏教からの引用はありますが、自からの考えが書いてあります。
「そうは言っても、こういう場合もあるよ。」と思うと
ちゃんと次にそういう展開があるのが安心して読める理由だと思います。

昨日、ある本を読みました。
その本は「コピー・アンド・ペースト」の部分がたいへん多くて
何を伝えたいのかよく分からなかったのです。
読み終わって考えてみると、結局はコピーした元の文学を利用して
自分がいかにそういう世界に触れて生きている人間であるか言いたかったのでしょう。
その本のタイトルは偶然にも「運命」でした。
文章を書くというモチベーションに本質的な使命のようなものが無いのは
文学としてのレベルが低いように思います。

大衆に向けた老人の説教のようでも五木はさすがに文学者です。
by tatakibori | 2009-12-03 21:12 | 読書
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