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隈取絵師

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津山では話題の江戸時代の絵師・鍬形恵斎を主人公とした歴史小説です。
恵斎の描いた鳥瞰図「江戸一目図屏風」は東京スカイツリーに複製が
展示されていて現在の眺望と比較が楽しめるそうです。
この本は山陽新聞でも大きく取り上げられているのが記憶に強く残っていました。
私と同世代の地方在・サラリーマン作家の華々しい文壇デビューと言うだけで
力強い存在感とその才能の豊かさを想像させてくれる記事でした。
じつに羨ましい人がいるもんだ・・と思ったのです。

この著者の平茂寛(ひらしげかん)が既知の友人であったのには驚きました。
兼業なのでペンネームを使っていたので分からなかったのです。
平茂寛氏は大学の一級上になるのですが私が1年遅れて入ったので同い年です。
在学中は知らなかったのですが、津山に住んでいる同窓会の仲間です。

本の内容はまさに歴史小説のスタンダードを外さぬ正攻法の力作です。
冒頭の度肝を抜くような官能的な表現は五味康祐などを連想させますが、
文体は無駄な飾りを排した淡々とした描写で、スムーズにこの世界に
入っていけるのが特徴です。
整然とした展開が物語を美しく築いているのを感じます。

普通の職業で言うと定年までのカウントダウンが始まった年齢ですが、
執筆業となるとここから始まるような奥の深さがあります。
高校時代の仲間にも優れた作家達がいます。
ITや経済に詳しい竹内一正氏、有名な歴史学者の山本博文氏などです。
机を並べて学び、同時代を生きてきた共有できる「言葉」があるのかも
しれませんが、どれを読んでも理解し易い優れた文章を書く人ばかりです。
私にも、まだまだ学ぶ事も多いし、努力できる事もたくさんあるのを
彼等が教えてくれます。

津山の人達にお薦めの作家がまた一人増えました。
「隈取絵師」を是非読んで下さい。
ブックセンターでも1,575円で手に入ります。
by tatakibori | 2012-08-28 09:53 | 読書
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