工芸作家展の準備が進行中です。
工芸とアートの違いは何だろうと考えました。
よく言われるのに「現代アートはコンセプトがあってのものだ。」という事があります。
コンセプトとは英語で概念です。
概念だから抽象的なもので言葉になり難く、それゆえ芸術的に表されるのでしょう。
概念を言葉で表現すると「名辞」となるそうです。
心で感じとった概念を2次元、3次元で表現するのが芸術です。
なるほど、でも工芸にもコンセプトはあるようです。
でも、工芸の場合は作りながらコンセプトが生れてくる場合があります。
単純な繰り返しの作業の中から人間のDNAの持つ繰り返しやリズムが
そこに再現されて複雑な感情を織り込んでいくのが工芸の本質であるからです。
モチーフと言うのがあります。
フランス語で動機、理由、主題です。
創作の主題となった主要な思想や題材をモチーフと言うようです。
工芸の場合は、何か作らずにおれないような衝動があってそれが思想や題材を持つわけではありません。
漠然とした愛とか平和とか安らぎなら持っていますが、反戦とか人権問題やまして環境とか
政治問題などまで工芸で表現する事はあり得ません。
その主題が大きくなり、メッセージ色が強くなれば美しい世界から離れていくように思えます。
人によっては美の感動より主題の示す世界に関心を示すようで
ニュースで紹介するアートは主題のみが語られる傾向が多く
美しい感動はどうなったのかと疑問に思う事が多くあります。
テレビ番組を作るのは優秀な選ばれた人々ですがそれは言葉にならない
概念や美という基準がそこに無いからだろうと思います。
端的に言えば工芸作家を集めて見ると、このグループで金融業をやったら
一年以内に破綻しそうに思えます。
そういう価値観のベクトルの違いがあります。
テーマ(主題)もアートと工芸では違うようです。
工芸は漠然とした、癒しとか落ち着きのような安らかな気分のものです。
ところが、瀬戸内国際芸術祭の主催者が「憤り」こそテーマだと言ってます。
怒り、悲しみ、○○反対などネガティブな要素を挙げるのがアートの特徴です。
頭で考えるのがアートならば、手で考えると言うか
作る喜びを感じながら、そこから生れてくる創造の命の力を表現するのが
工芸だと定義しての工芸作家展です。
現在多くの作家が集結して進行中です。
テーマは
「作った人の顔と名前が分かる物に囲まれたこころ豊かなくらしを」
と言うのが用意してありますが、そこは工芸系の人々、
何か作りながら、話ながら新しい概念が生まれてくるのを楽しみにしています。