15、6年ほど前の木版画です。
ポルシェ356という1950年代のドイツ製スポーツカーです。
私達の世代が若かった頃は自動車こそが憧れでした。
それは多くの人の共通の価値観でありました。
この版画からフェルディナント・ポルシェ、空冷フラット4、ソレックスキャブレター、
550スパイダー、ジェームス・ディーンと脳裏に浮かんでくれば
あなたも立派なエンスージャストです。
最近の若者は自動車には興味を持ちません。
いや、持つ人もいますが一部だけです。
オタク文化が象徴するように趣味は多様化され、
ジャンルは多くなり、専門的に狭く深くなっているようです。
かつての〇〇ブームというようなカメラとか腕時計、ファッション、オーディオ、
自動車など豊かさの象徴であり憧れを持つような趣味が今あるのでしょうか?
若い人に多く接して話を聞いていくうちにある発見をしました。
キーワードは「直島、安藤忠雄、草間弥生、村上隆・・・」そんな感じです。
かつての「シュトゥットガルト、ピニン・ファリーナ、ジウジアーロ・・・」に代わる
価値観かもしれません。
F1グランプリよりも瀬戸内国際芸術祭なのです。
巷から貧乏臭い不良が消えて、お洒落で豊かな若者が増えたと聞きます。
その典型的な象徴がアートなのでしょう。
最初は雑誌の中だけの豊かな生活の象徴だった高級車やスポーツカーを
やがて手に入れる時がきたように、今はあこがれの美術工芸品を
多くの人が手に入れる時代がくるように思えます。
基本的に大量生産の工業製品と手作りの美術工芸品は
豊かさを感じるポイントが違います。
今はまだ入り口に立ったばかりですが、人々の目はより本物へ
向けられていくのが自然の流れです。
先を見つめて、より良い仕事に励まなければならないと
あらためて思っています。
今の時代は大きな転換点です。