「職人と作家はどう違うのか?」という話があります。
木彫刻の場合は仕事を請け負う人が別にいて、材料が持ち込まれて
注文に合った仕事をするのが職人です。
作家となると、見込み生産と言うか、自前の材料で作品を作り溜めて
個展など開くのが主な仕事になります。
職人は親方のもとへ弟子入りして10年くらいの修行を経て
一人前になります。
営業やマネージメントをしないのが職人とも言えますが、
大工の棟梁のように経営者としての仕事もこなすのが
職人の親方です。
優れた作家は職人としても一流の仕事をしなければなりません。
時代は進んで、芸術家の一部には考えるだけの人も出てきました。
制作は職人的な人に任せてしまうのです。
一流のアーティストの大部分がそうなのかもしれません。
そして、技術的、職人的な部分が必要ない美術が増えてきました。
技術を軽視する傾向とパソコンの普及などで多くの分野では
いくつかの才能があれば一定程度の良い仕事が出来る場合もあります。
必ずしも修行が必要ない時代になったのです。
それは、ある意味で作家を使い捨てにする時代になったという事です。
本当の意味で創作で食べていくには、以前とは違う修行も必要に
なってきています。
もちろん以前からの基本的な技術も必要で、その意味をちゃんと
理解しなければデジタル時代にもついていけません。
職人になるには修行が必要ですが、作家になるには少しばかりの
才能があればなんとかなります。
それこそ才能さえあれば、スタートしてから独学で修行する事も可能です。
「だれでも作家」の時代と言われますが、ベテランの職人が見ても
驚くような才能を持った若い作家もいます。
かなり混沌とした時代になりましたが、
新しい何かが始まるのかもしれません。
使い捨てられないようにコツコツと地味にがんばりましょう。