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落柿舎のしるべ

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京都嵯峨野の落柿舎は芭蕉の門人・向井去来の遺跡です。
去来については一般にあまり知られてませんが、
落柿舎で手に入る「落柿舎のしるべ」(保田與重郎)¥700
という冊子を読むとよくわかります。
そのP.16に興味深い一文があります。
初版発行は昭和45年(1970)です。
「近年発見された円空を、近世第一の彫刻家として尊敬する人は多い。
円空を彫刻家と呼ぶのは、少しをかしい表現だが、私はこの上人の
歌集を見せられた時に驚いたことは、そこに見られる円空の情緒や、
考え方さへ、仏といふよりわが神道第一だつたことだつた。」
向井去来は儒学を学び、武道から神道を学び、そして武士を捨てて
俳諧へと進んでいます。
時代は元禄ですから古学の復興以前であり、後の時代の
国学までは進んでいない頃です。
現在の宗教観では、明治になって神仏を分け、さらにキリスト教が入ってきて、
それ以前の庶民的で自由な信仰の感覚が忘れ去られたと言えます。
それにしても去来の俳句、円空の彫刻にはある種の清々しさがあり
元禄時代の成熟した文化の風土を感じさせます。
俳人去来と修験者・円空上人の共通点は「自然(かんながら)の道」なのです。



by tatakibori | 2016-09-04 21:02 | その他
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