オリヴァー・サックス著「火星の人類学者」(脳神経外科医と7人の奇妙な患者)
これは全米ベストセラーとなった医学エッセイです。
事故や病気で脳に損傷を負った人や自閉症の人達の特異な創造力などについて
書かれています。
病気や障害のある人全てに創造力がある訳もないし、
芸術家が全てそのようなハンディのあるという事もありません。
ただ創造力の源を考えるヒントにはなります。
この本、じつは父の持ち物を整理していて見つけて読んでみました。
父は網膜はく離の後、左目の異常に苦しんでいました。
その頃に見つけて買ったようですが、たぶん読んではいないと思います。
エッセイながらたいへん読みづらい文章です。
興味深く読んだのは
自閉症の人がモノマネが上手な場合があるという話です。
一種のアイデンティティの飢餓感のようなものがあり、
他の人格を借りたり取り込む必要があるかもしれない。・・・
そして音楽にも天才的な才能を発揮する事があるようです。
演奏中は自由で優雅で情感豊かに変身するのですが、
音楽がやんだとたん、また自閉症に戻るそうです。
(これに思い当たる天才ミュージシャンがいます。)
私の祖父は40歳前に脳を患ってからデフォルメされた独特の作風をあみ出します。
それは円空よりもさらに自由奔放でありながら計算されたバランスが見事です。
棟方志功が絶賛した作風は脳の障害がもたらした賜物かもしれません。
それを代々受け継いできたのです。
だから祖父と同じ事は出来ません。
それを理解する為にも人間の本質や脳や精神のしくみを考えていると
いう訳なのです。
人間の進歩の源は遺伝子のエラーや病気や障害など何かの
マイナス要因である場合の方が多いのは間違いないと思います。
ただし、それを文化として発展させ、後世に残していくには
力強い健康な魂が必要であると思います。